「おとずれ」求肥製:千草庵
求肥生地で味噌餡を包みまるめ、燕(つばめ)の形にくりぬいた羊羹を添え、さらに、緑色に染めた羊羹で抽象的な模様を付けています。
「つばめのおとずれは季節の風物詩だった。そして長くつめたい冬のあとに来る春が、野山にいっぱい花を咲かせながらまだどこかに油断のならない寒さをひきずっていたのとは違い、つばめのおとずれは、少しの曖昧さもなく夏の到来を告げる出来事でもあった」 (藤沢周平)
燕をモチーフにしたお菓子を見ると、なぜかこの文章が浮かんできます。
このお菓子、一切の過飾を省いた、シンプルな意匠ですが、緑と燕の絶妙な構図がすばらしいですね。
緑色で描いた不思議な造形は何を写しているのでしょうか?初夏の風に揺れる若葉でしょうか、それとも、新緑の間を吹いてくる快い風、薫風を表しているのでしょうか?
燕のおとずれを喜んで、新緑が楽しく踊っているようにも見えますね。