「春の錦(はるのにしき)」こなし製:とらや
緑、黄、紅の三色に染め分けたこなしで小豆こし餡を包み、一輪の桜を彫り込んだ木型で押し抜いたお菓子です。干菓子として宝永4年(1707)に初めて創作されました。
とらやさんの数ある上生菓子の中に、このお菓子と対になる逸品があります。
「山路の錦(やまじのにしき)」こなし製:とらや
緑、黄、紅の三色に染め分けたこなしで、肉桂入りの小豆こし餡を包み、重なり合う楓を彫り込んだ木型で押し抜いたお菓子です。大正7 年(1918)に初めて創作されました。
形はどちらも木型で彫られたもので、一方が春の代表「桜花」、他方が秋の代表「楓葉」をかたどっています。
使われている三色は同じですが、それぞれの季節による見立ての違いが楽しめます。
春の三色
緑:フレッシュな緑色に芽吹いた若葉
黄:菜の花やタンポポなどの鮮やかな黄色の野花
紅:やさしい薄紅色の桜花
秋の三色
緑:色づく前のまだ青々とした葉っぱ
黄:黄金のように黄色く色づいた黄葉
紅:燃えるように赤く色づいた紅葉
春の野山の晴れやかな色合いや、秋の紅葉の鮮烈な色彩を、いずれも錦(華麗な文様を織り出した織物)にたとえたお菓子です。
春の桜も秋の紅葉も、ともに日本列島を彩る植物の華やかな姿ですが、桜前線が南から上ってくるのに対し、紅葉は北から下りてくるのもおもしろいですね。