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桜がさね(山種美術館)

 

山種美術館に併設された「Cafe 椿」さんで提供されている上生菓子を紹介するシリーズです。 

 

今日紹介するお菓子は、2017年2月16日〜4月16日の期間開催されている「 日本画の教科書 東京編―大観、春草から土牛、魁夷へ―」展にちなんだものです。 

 

「桜がさね(さくらがさね)」煉切製:菊家 

ピンク色に染めた煉切を薄くのばし長方形に切り、桜の型を押します。その上に柚子餡を置いて二つ折りにし、淡雪羹を型抜きした桜の花びらを散らしたお菓子です。 

 

煉切やこなし生地を二つ折りにする形状のお菓子は、とり合わせる色、表面の図柄などによってさまざまなイメージに展開できる重宝な造形ですね。 

 

今回のお菓子のモチーフとなったのは、松岡映丘の《春光春衣》です。 

 

(出典:http://www.yamatane-museum.jp/exh/rivised45.html) 

 

平安貴族の女性を桜や松とともに描き、砂子撒きや箔散らしといった技法をふんだんに使用した華やかな一幅です。《平家納経》など古い時代の絵画を参考に描かれたそうです。 

 

松岡映丘(まつおかえいきゅう)は、大正・昭和初期にかけ活動した日本画家で、平安以来の日本の古典絵画「大和絵」の再興に情熱を注いだことで知られています。有名な民俗学者の柳田國男は実兄です。

 

絵の中の姫君たちが纏った豪華絢爛な衣の袖をモティーフにしたお菓子ですね。 

 

生地のピンク色で桜、餡の緑色で松を表現しているようです。 

 

二つ折りにする際に、上下の生地をぴったり合わせず、斜めに少しずらせて重ねているのも、姫らの楽しい雰囲気を象徴しているようで微笑ましいですね。 

 

菊家さんの餡のレパートリーは広く、小豆のこし餡やつぶ餡ばかりでなく、胡麻餡、栗餡、黒糖餡、柚子餡、杏子餡、きんかん餡、りんご餡など意匠に合わせて細やかに使い分けているのも大きな魅力です。

 

 

桜の時期にはまだ少し早いですが、ひと足先に、素敵なお菓子で春爛漫を堪能できました(^◇^)/