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かぶら矢(山種美術館)

 

山種美術館に併設された「Cafe 椿」さんで提供されている上生菓子を紹介するシリーズです。

 

「かぶら矢(かぶらや)」煉切製:菊家 

水色と白に染めた煉切で胡麻入り小豆こし餡を包み、木型で波濤を描き、煉切製の羽根、グラス絞り羊羹製の矢柄を配したお菓子です。

 

「菊家ブルー」と私が勝手に呼んでいる菊家さんならではの爽やかな水色が印象的なお菓子です。 

 

菊家さんにとってもきっとお気に入りの色なのでしょう。毎回必ずと言って良いほど一品はこの色合いが使われています。 

 

今回のお菓子のモチーフとなった絵はこちらです。 

 

(出典:http://www.yamatane-museum.jp/exh/archives/exh110108.html) 

 

歴史画に新境地を拓いた日本画家、小堀 鞆音(こぼり ともと)の《那須宗隆射扇図》です。

 

平家物語にでてくる源平合戦の中で有名な三大戦いは、「一ノ谷の戦い」、「屋島の戦い」、「壇ノ浦の戦い」です。 

 

その中の「屋島の戦い」において、源氏方の弓の名手、那須与一が、平家側が掲げた扇を見事に撃ち落としたという名場面を描いた絵ですね。 

 

絵のタイトルは「那須宗隆」となっていますが、こちらは本名、「那須与一」は通称で同一人物です。 

 

「揺れる舟の上の扇の的を射よ」との平家の挑発に対して、源氏の代表として、与一が見事大役を果たし、平家が没落していく大事な転換点となった見せ場のシーンです。 

 

那須与一の放った矢が瀬戸の波の上を鮮やかに飛び越える一瞬を見事に切り取った意匠ですね。 

 

餡の中に埋め込まれた黒ゴマが、ひとつ、またひとつと口の中で弾けるたびに、打ち寄せる波のように濃厚な風味が周期的に広がります。

 

屋島は私の故郷、香川県にあることもあり、とりわけ味わい深くいただけた逸品でした。 

 

瀬戸内海から望む屋島