お店に入ると、入り口で「ホットケーキの注文はありますか?」と必ず聞かれる喫茶店があります。
かつて川端康成がひいきにしていたという昭和23年創業の老舗。
ジョンレノンとオノヨーコも訪れたといいます。
鎌倉の小町通りにある「イワタコーヒー店」です。
ここのホットケーキを食べてから、ホットケーキに対する概念が大きく変わりました。
なんといっても、2枚重ねで8センチはあろうかという、分厚さ!
ほら、見てください、このボリューム!
巻尺持参で臨みましたよ(^^♪
表面はこんがりキツネ色のカリカリ、中はふっくら、ふんわり、ふ〜わふわ。
とろけたバターと、たっぷりのメイプルシロップが滲みこんだスポンジは、至福のおいしさ!
特別なセルクルを使って焼き上げているようですが、焼きあがるまで20分ほどかかります。
一回に4人分しか焼けないため、先客があると、1時間以上待つこともしばしば。
それでも食べたいイワタのホットケーキ。
英語圏では主にパンケーキ (pancake) と呼ばれるものですが、日本の「ホットケーキ」もここまでくると、もはや独自の食文化になっていますね。
海外でも Japanese-Style pancake として紹介されています。
さてさて、今日の上生菓子はとらやさんのお菓子ですが、一目見るなり、このイワタさんのホットケーキを思い出したので話が横道にそれてしまいました。
「峯の春(みねのはる)」焼物製:とらや
卵黄、砂糖、卵白、小麦粉で作った皮種を熱した金枠の中に薄く流し、その上に黒糖餡をのせ、さらにその上に種を型いっぱいまで流します。頃合いを見て裏に返し、霞立つ富士山の焼印を当て、金枠から抜いたお菓子です。
種加減、火加減が難しく、どちらも適切でないと金型がきれいに抜けず、熟練を要する焼き菓子のひとつだそうです。
このようなシンプルなラインだけで、秀峰富士のすそ野にたなびく春の霞を表現できるのは、まさに日本ならではの感性ですね。
友人の外国人に見てもらうと、馬の形とか犬、手などに見えると言っていました(笑)
昭和10年(1935年)にとらやさんで初めて創作されたお菓子ですが、江戸の初期、讃岐の永徳屋又右衛門が長崎のオランダ人から製法を伝授された「唐饅頭」が原型となっているようです。
イワタコーヒーさんの極厚ホットケーキのルーツもこの辺に絡んでいたとしたら面白いですね!