また一軒、名店が幕を下ろしました。
東京都世田谷区祖師谷にあった「茶席菓子処 そえ田」さんです。
ここの上生菓子の特徴は、一言で表すならば「自然体のお菓子」と言えるのではないでしょうか。
色、形、味、銘のいずれにおいても、気負ったところがなく、抑制のきいた色合いに、品格ある意匠、素材の風味を最大限に生かした味わいと、バランスのとれた大好きなお菓子でした。
いつもお店を訪ねると、ご主人自ら笑顔で迎えてくれ、お菓子の説明から、包装、会計まですべておひとりでこなされていました。
メモを片手にお菓子のことを根掘り葉掘り私が聞くものですから、最初は同業者の偵察や雑誌の取材と勘違いされたこともありました。
また、特注で「藤ばかま」のお菓子を創っていただいたこともありましたね。
いろいろな思い出がよみがえってきます。
ホームページによると、ご主人添田喜美男さんは、福島県郡山市のご出身で、15歳で和菓子の道に入られたそうです。
いろいろな和菓子店、洋菓子店で修業を積んだ後、東京赤坂の名店「塩野」の職長を務められ、テレビ料理番組に出演されたり講師に招かれたりと活躍されました。
その後独立し、1980年(昭和55年)に開業されました。
和生菓子一級技能検定取得、第十七回全国菓子大博覧会金賞、第三回全国菓子工芸大品評会優秀技能賞など、数多くの賞も受賞されています。
では、私が今までにコレクションしたそえ田さんのお菓子を一挙に公開し、皆さんとともに名残惜しみたいと思います。
「椿(つばき)」外郎製
「猫柳(ねこやなぎ)」そぼろ餡製
「御雛様(おひなさま)」煉切製
「御内裏様(おだいりさま)」煉切製
「菜の花(なのはな)」浮島製
「土手の春(どてのはる)」羊羹製
「霞(かすみ)」羊羹製
「花ごろも(はなごろも)」外郎製
「御所桜(ごしょざくら)」煉切製
「花見舟(はなみふね)」そぼろ餡製
「蝶々(ちょうちょう)」黄身餡製
「岩根つつじ(いわねつつじ)」きんとん製
「山吹(やまぶき)」きんとん製
「楓(かえで)」錦玉製
「卯の花(うのはな)」きんとん製
「空豆(そらまめ)」薯蕷製
「筍(たけのこ)」薯蕷製
「あやめ」そぼろ餡製
「菖蒲(しょうぶ)」煉切製
「水中花(すいちゅうか)」葛製
「泉(いずみ)」錦玉製
「ほととぎす」煉切製
「水中花(すいちゅうか)」葛製
「青成り(あおなり)」道明寺羹製
「朝顔(あさがお)」外郎製
「夜空(よぞら)」煉切製
「七夕じょうよう(たなばたじょうよう)」薯蕷製
「秋草(あきぐさ)」煉切製
「桔梗(ききょう)」煉切製
「ほおずき」煉切製
「背戸栗(せとぐり)」煉切製
「藤ばかま(ふじばかま)」外郎製
「滝もみじ(たきもみじ)」きんとん製
「松茸(まつたけ)」薯蕷製
「山茶花(さざんか)」外郎製
「寒水(かんすい)」そぼろ餡製
「初雪(はつゆき)」羊羹製
「さとの雪(さとのゆき)」煉切製
「雪囲い(ゆきがこい)」煉切製
「お多福(おたふく)」薯蕷製
「水仙(すいせん)」煉切製
先日伺った時もお元気そうで、まさかこんなに早く閉店されるとは夢にも思いませんでした。
今までたくさんの美味しいお菓子を作っていただきありがとうございました。そして、お疲れさまでした!