「花衣(はなごろも)」こなし製:とらや
紅花色素で紅色に染めたこなし生地を三角形に薄くのばします。その中央に小倉餡を置き、三方から包み込むように折り合わせ、梅の押印を配したお菓子です。
安永2年(1773)頃にはじめて創作されたといいますから、約250年に渡り、大切に守り伝えられてきた歴史ある逸品ですね。
菓銘となっている「花衣」という言葉には3つの意味があります。
・「表は白、裏は紅色」という桜襲(さくらがさね)の色目
・華やかな着物や花色の衣
・お花見に行く時に女性が着る晴れ着
今回は梅にちなんだお菓子なので、梅の花見に着ていく晴れ着をイメージしたお菓子でしょう。
五弁花の輪郭の中に九つの点でシベを表した典型的な梅の文様があしらわれています。
生地を折り合わせた時にできる水滴型の美しい曲線は着物の袖口を連想しますね。
また、三つの生地がふっくら合わさった姿は今にも開きそうな梅の蕾のようにも見えます。
花びらの隙間からのぞく艶やかな小倉餡の美味しそうなこと!
見る方向によって花の数が刻々と変化し、一輪一輪と梅の花が咲き出した風情を見事にとらえていますね。