「招福(しょうふく)」煉切製:秋色庵大坂家
ピンク色に染めた煉切生地で小豆こし餡を包み、木型にて扇をかたどったお菓子です。
扇は、あおいで涼をとるだけでなく、儀式や祭事、舞踏の道具としても使われます。
また、扇には和歌を書いたり、四季の草花や古典文学の一場面が描かれているものも多く、感性が和菓子の世界と共通しているため、上生菓子の意匠としてもよく用いられます。
その末広がりの形は、発展や繁栄の吉祥でもあることから、縁起の良いものとして、新年や婚姻などの祝賀の贈り物にも使われます。
このお菓子の扇も中央に「福」の文字が配され、招福開運の願いが込められた大変おめでたい逸品ですね。
扇の辺縁のジグザグは波の形にも見え、大海原の波がどこまでも続くように「良いことが無限に広がる」という解釈もできます。
梅や桜の花をも連想させる柔らかいピンク色は、見る人を和ませ、優しい気持ちにさせてくれる素敵な色合いでもあります。
また、色彩心理学によると、ピンク色は味覚的な甘さを刺激する色で、甘いものがより美味しく感じる作用もあるそうなので、まさに和菓子の色としてぴったりですね。
そしてなにより、扇は日本人の発明品だけあって、和菓子のテーマとしてこれほど相応しいものはないでしょう!