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花びら餅(文銭堂本舗)

「花びら餅(はなびらもち)」羽二重餅製:文銭堂本舗 

口当たり柔らかな羽二重餅に、上品な白味噌餡と自家製の蜜漬け牛蒡をはさんだお菓子です。 

 

ほんのりと透けて見える薄紅色のぼかしは、春のあけぼのをも思わせる、いかにも初春のお菓子といった風情ですよね。

 

この薄紅色は、白い羽二重餅の裏側に紅色に染めた菱形の餅生地を重ねることによって発色させたものです。 

 

 

白の丸餅が「陽」、赤い菱餅が「陰」、すなわち「男女」を表しているともいわれています。

 

お正月にいただく伝統の和菓子といえば、この花びら餅も欠かせませんよね。菱葩餅(ひしはなびらもち)、葩餅、御菱葩(おんひしはなびら)、お葩とも呼ばれています。 

 

今では裏千家の初釜のお菓子として有名になっています。 

 

 

文銭堂本舗さんは新橋にある昭和21年創業の和菓子店で、どのお菓子もこだわりを持って丁寧に作られていて、私の大好きなお店のひとつです。 

 

このお店でさらに素晴らしいのが、それぞれのお菓子に、その製法や由来・謂れについての詳しい解説書を付けてくれることです。 

 

この花びら餅にも次のような丁寧な説明書が添えられています。 

 

 

この伝統的なお菓子の由来についてはこの解説書が簡潔にうまくまとまっているので、こちらに譲ることにして、さっそくいただくことにしましょう。 

 

しっとりやわらかい羽二重餅の心地よい舌触りの後に、味噌餡の上品な甘みと深いコクのある旨味が口いっぱいに広がります。さらに、よく煮込まれた牛蒡の素朴な風味とホクホクとした食感が加わると、いつも母親の作るお雑煮を思い出してしまいます。 

 

私の故郷である香川県のお雑煮は、白味噌の汁の中に餡入りの餅や、牛蒡、きのこ、かまぼこなどを入れた珍しいもので、この花びら餅の味にとてもよく似ているのです。

 

花びら餅のルーツが宮中の雑煮にあることから、不思議な巡り合わせを感じますね。