人々が集まって共通の御題(おだい)で歌を詠み、その歌を披講する会を「歌会」といい、既に奈良時代に行われていたことが、「万葉集」によって知ることができるそうです。
この「歌会」の中でも天皇によって開催されるものを「歌御会(うたごかい)」といい、年の始めに開かれるものは「歌御会始(うたごかいはじめ)」と呼ばれていました。
この歌御会始の起源は、必ずしも明らかではありませんが、鎌倉時代にはすでに行われていたと考えられています。その後、断続的に引き継がれ、改革を加えながら、少しずつ形をかえ、1926年以降は「歌会始(うたかいはじめ)」と名称を改められました。
さらに、1947年より、皇族のみならず国民からも和歌を募集し、在野の著名な歌人(選者)に委嘱して選歌の選考がなされる現在の形式になりました。
ちなみに過去10年間の御題は、次のようになっています。
2007年:月
2008年:火
2009年:生
2010年:光
2011年:葉
2012年:岸
2013年:立
2014年:静
2015年:本
2016年:人
そして、来年、2017年の御題は「野」です。
この歌会始の御題をもとに作られる創作和菓子のことを御題菓(ぎょだいか/おだいか)といいます。
明治21 年(1888)に、京都の上菓子屋の有志が集まり、御題にちなむ菓子を作って展示会を開催したのがこの「御題菓子」の始まりです。
翌年の御題が発表されると、各和菓子店では一年がかりで御題菓の準備をはじめます。どのような意匠にして、素材や味は何にするか、御題にちなんだイメージをふくらませ、何度も試作を重ねて創り上げていきます。
今日は、来年の御題「野」によせて創作された豊島屋さんの御題菓を紹介します。
「陽光(かがやき)」村雨製:豊島屋
黄と緑に染めた村雨生地でつぶ餡を巻き、春の野原をイメージし、その上を舞い踊っている蝶の姿をこなしで表現したお菓子です。
”春の到来は私たちに四季のすばらしさ、自然の恵みを感じさせてくれます。春の野に柔らかな日差しがかがやき、私たちの心を踊らせる、そんな快い気持ちを御題菓子として作らせて頂きました。”(豊島屋HPより)
村雨とは、こし餡に砂糖と米の粉をまぜて、蒸したお菓子のことです。
ホロホロとくずれそうな、乾いた感じの風合いですが、噛むほどにモチモチ、しっとりとしてきて、やがて口の中で溶けてしまうという独特の食感が特徴です。
ほろりほろりとくずれるように溶けていく村雨と、 ほど良い硬さのつぶ餡の食感の違いが楽しめる贅沢な逸品ですね。
職人さんの素晴らしい創造力と美意識、巧みな技が結集した御題菓をじっくり味わってみてください。