最近、毎月1回のペースで自分のオリジナルデザインの上生菓子を特別注文しています。
今月は藪柑子(やぶこうじ)をテーマにチャレンジしてみました。
藪柑子は千両や万両と同じように、赤い実をつける常緑樹で、金運に恵まれ、商売繁盛の御利益があるといわれ、正月の縁起木として使われます。
これからの時季にまさにぴったりの主題ですね。
まずは対象をスケッチして、イメージを膨らませるところから始めます。
いろいろな角度から素描しているうちに、三枚の葉っぱと赤い実を組み合わせる方向性で固まってきました。
三枚の葉っぱを三角錐のように合わせることにして、全体的な形は下のお菓子を参考にしました。
「菖蒲(しょうぶ)」こなし製:豊島屋
三角形に切った生地を、三方より端を持ち上げて包み込む形で、それによって作られる三つの面を三枚の葉っぱに見立てます。
また、三面のうち一面のみにヘラで葉脈を刻み、三枚の葉が重なり合った頂点の部分に赤い実を二つ添えることにしました。
制作をお願いするのは行きつけの「もみぢ」さん。昭和21年創業の横浜の野毛にある和菓子屋さんです。
ご主人はいつもにこやかな白髪のおじいちゃんで、毎回私のスケッチを元に、一生懸命作ってくれます。
今回のような形態のお菓子を作るのは初めてだとおっしゃっていましたが、挑戦してみましょうと、こころよく引き受けていただきました。
「藪柑子(やぶこうじ)」煉切製:もみじ
緑色と白の二色の煉切生地を重ね合わせ三角形に切り、その中央に小豆こし餡を丸めたものを置きます。生地の三つの頂点を餡玉の上で合わせるように包み込み、赤い煉切製の玉をふたつのせ、生地の一片にヘラで葉脈を刻み付けたお菓子です。
予想より生地が分厚くて、ころっとした感じに仕上がりましたが、職人さんの優しいお人柄が表れているようでほほえましいですね。
ふかふかの温かいお布団に包まれたようなその姿に、厳しい寒さも和らぐようです。