和菓子の技法に「さじ切り」というのがあります。
さじ、つまりスプーンを使って、こんな感じに花びらなどの形を刻む方法です。
(出典:http://eonet.jp/travel/chousa/160308/p3.html)
さじ切りを効果的に使ったお菓子としては、バラの花を写したものが代表ですね。
「薔薇(ばら)」煉切製:末広庵
私はかねてより、この技法を用いてカエデの葉を描いてみたいと思い続けていました。
カエデを写した上生菓子は今まで100種類以上集めてきましたが、さじ切りで描かれたものはまだお目にかかったことがないのです。
お菓子の完成図をスケッチしたり、実際に、粘土を使ってシミュレーションしたりして、イメージを膨らませてきました。
そして、今年、紅葉の時季を迎え、美しく色づいたカエデの葉を見るにつけ、本物のお菓子で作ってみたいという欲求がむくむくと湧き上がり、どうにも抑えきれず、ついに決行することにしました。
行きつけの和菓子店のご主人に頼み込んで、本体のみを作っていただき、さじ切りの部分を自分でやるのです!
紅・緑・黄色の三色にぼかし染めた煉切で小豆こし餡を包みまるめたものが全部で10個できあがってきました。
ぼかし具合が絶妙ですね。すべすべのきれいな生地なので、スプーンを挿すのがもったいないような気がします。
おそるおそる、慎重にスプーンを挿していきます。
下描きや目印もなく、ぶっつけ本番で描かないといけないので緊張します。
何回か挿していくと、スプーンに生地のかけらがくっついてくるので、その度に濡れ布巾できれいに拭き取らないと、シャープなラインが描けません。
ふぅ〜、なんとか一作目完成です。
バランスが今ひとつですね。きれいな紡錘型の葉を描くのが意外に難しいです。刻んだラインにも迷いがみられます。
プロの描く胸のすくようなさじさばきとはほど遠いですが、10個すべて刻んだ中で、まあまあの出来のがこれです。
「さじ切りもみじ」煉切製:もみぢ/上生菓子図鑑
スプーンを挿したとき、生地を少し持ち上げるようにして、葉っぱが浮き上がって見えるように工夫してみました。
少し斜め横から見ると立体的になっている様子がよくわかると思います。
自分で描き上げたお菓子の味は、格別と言いたいところですが、ちょっぴりほろ苦さを感じる甘さでした(笑)