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海辺の月(山種美術館)

 

浮世絵史上最大のヒット作である『東海道五十三次』で有名な歌川広重の作品が今日のお菓子のテーマです。

 

歌川広重《武陽金沢八勝夜景》安政4年(1857)制作 

(出典:https://www.adachi-hanga.com/ukiyo-e/items/hiroshige225/) 

 

この作品は、景勝地として知られ、八景にも詠まれた武陽金澤(現在の横浜市金沢区金沢八景)の夜景を描いたものです。 

 

入り江と点在する島々を俯瞰する構図で、中央上部には満月が上がり、広重ブルーといわれる深い藍色の色調がすばらしい叙情性の高い作品です。 

 

大判三枚続きのパノラマ画面に描かれた広重晩年の大作で、雪の木曽路を描いた《木曽路之山川》、渦潮を花に見立てた《阿波鳴門之風景》とあわせて、“雪月花”の三部作を構成しています。 

 

こんなダイナミックな作品が、小さなお菓子の中にどのように表現されるのか楽しみですね。 

 

「海辺の月(うみべのつき)」道明寺羹製:菊家 

道明寺羹の中に、金柑皮の砂糖漬けと大納言小豆の蜜漬けを入れ、扇形に固め、淡雪羹製の帆掛け舟と満月を配したお菓子です。 

 

広重ブルーに対して、菊家さんお得意の、菊家ブルーで対応するかと思いましたが、予想外の色合いにびっくりしました。

 

月光に照らされ、細やかに輝くさざ波を道明寺粉でうまく表現しています。 

 

大納言は島影、金柑の黄金色は月明かりに染まった海の色でしょうか。 

 

月、海、夜をキーワードに、職人さんの自由な発想で、広重とはひと味違った独自の世界を創り上げていますね。