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夕涼み(山種美術館)

 

日本画専門の「山種(やまたね)美術館」に併設されたカフェ「Cafe 椿」で販売している上生菓子を紹介するシリーズ第4弾です。 

 

この上生菓子は、青山の老舗菓匠「菊家」さんにオーダーし、特別に創作されたオリジナルの和菓子です。 

 

8月27日〜9月29日の期間開催されている「浮世絵 六大絵師の競演 ―春信・清長・歌麿・写楽・北斎・広重―」展にちなんだ5種類の上生菓子を、5日連続でお届けします。 

 

今日紹介するお菓子は、江戸時代中期を代表する浮世絵師、勝川春章(かつかわ しゅんしょう)の作品《四代目岩井半四郎のおかる》がモチーフになっています。 

 

岩井半四郎は、江戸を代表する女形として高い人気を誇っていた歌舞伎役者です。 

 

勝川春章《四代目岩井半四郎のおかる》 

(出典:山種美術館) 

 

この絵にちなんで創作されたお菓子がこちらになります。 

「夕涼み(ゆうすずみ)」煉切製:菊家 

紅白に染め分けた煉切で小豆こし餡を包み、円形にかたどり、側面に羊羹製の柄を挿します。さらに、表面に千筋を付け、丸に三ツ扇の家紋や放射状の骨を型で押し、団扇をかたどったお菓子です。 

 

絵の中で、岩井半四郎が手にしている団扇にスポットを当て、お菓子でリアルに表現していますね。

 

 メルセデス・ベンツのマークにも似ている「丸に三ツ扇」の紋は、初代の生家が扇商だったことに由来するそうです。 

 

丸に三ツ扇 

(出典:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B2%A9%E4%BA%95%E5%8D%8A%E5%9B%9B%E9%83%8E) 

 

勝川春章は、当時人気の歌舞伎役者や力士たちを、似顔絵を用いた写実的な作風で描き、一世を風靡した浮世絵師です。 

 

彼の門下には、あの葛飾北斎もおり、のちの浮世絵師たちに多大な影響を与えました。 

 

上生菓子は、江戸時代中期頃に京都から発祥し、全国へ伝わっていったと考えられていますから、ちょうど勝川春章や四代目岩井半四郎らが活躍していた時代に産声を上げたことになりますね。