「さるすべり」きんとん製:田園調布あけぼの
求肥を芯にして小豆こし餡をまるめ、そのまわりに緑色に染めたそぼろを植え付けます。さらに、所々に薄紅色に染めたきめの細かいそぼろを添え、さるすべりを写したお菓子です。
さるすべりは夾竹桃(きょうちくとう)と共に夏を代表する花で、夏の季語になっています。
幹の樹皮がはがれた部分はつるつるしていて、木登り名人の猿でさえもうっかりすると滑り落ちてしまう、というのが名前の由来とされています。
また、別名「百日紅(ひゃくじつこう)」とも呼ばれ、百日ものあいだ紅色の花を咲きつづけることに由来します。
しかし、実際は、ひとつの花がずっと咲いているわけではなく、一度咲いた枝先から再度芽が出てきて次々に花をつけるため、咲き続けているように見えるというわけです。
さて、緑のきんとんの上に、色違いのそぼろを添えていろいろな草花を抽象的に表現する方法は、上生菓子の定番中の定番ですね。
「山吹きんとん」きんとん製:鶴屋八幡
「菜の花」きんとん製:豊島屋
「岩根つつじ」きんとん製:東宮
「つつじ」きんとん製:豊島屋
「つつじ」きんとん製:豊島屋
「紅花」きんとん製:鶴屋吉信
「卯の花」きんとん製:ちもと
「紫露草」きんとん製:豊島屋
「葛の花」きんとん製:鶴屋八幡
このように、そぼろの色合い、太さ、長さ、密度、水分量、植えつけ方などの諸条件を微妙に変化させることで、実に様々な花を描き分けています。
抽象的に作られたきんとんは、食べ手に自由な想像力を与えてくれ、小さなお菓子の中に無限の豊かさを感じることができるのがいいですよね!
京都「本隆寺」のさるすべり