日本画の専門美術館「山種美術館」に展示されている作品にちなんだ上生菓子をシリーズで紹介しています。
「華の王(はなのおう)」煉切製:菊家
ピンクと白にぼかし染めた煉切を円形に平らにのばし、小豆こし餡を中央に置き、ひだを寄せるように半包みにします。さらに、きめの細かい黄色いそぼろをたっぷりとのせ、牡丹の花を写したお菓子です。
その華麗さから花の王、富貴の花と呼ばれる牡丹がほころび、花芯をのぞかせている風情をみごとに表現しています。お抹茶との対比も美しい色合いですね。
こちらがモティーフとなった、鈴木其一の《牡丹図》です。
鈴木其一「牡丹図」1851(嘉永4)年
(出典:http://blog.goo.ne.jp/harold1234/e/a4e43e3cf92cb2b36cae5c59bf6f7e6a)
鈴木其一は、俵屋宗達・尾形光琳・酒井抱一に並び、琳派第4の大家として最近その評価が見直されている江戸後期の絵師です。
その作風は、ダイナミックな構成に明快な色遣いが特徴ですが、この牡丹の絵は少し趣が異なり、実に繊細で写実的な表現となっています。
牡丹というと、その幾重にも重なる絹地のような花びらに目を奪われがちですが、このお菓子でひときわ目を引くのは、華やかな花芯ですね。
湧き上がる黄金の清水のように、花に命を吹き込んでいます。