日本画の専門美術館「山種美術館」に展示されている作品にちなんだ上生菓子を紹介するシリーズです。
「おどり姿(おどりすがた)」錦玉製:菊家
輪になって楽しげに踊る人々の姿を描いたお菓子です。色とりどりの煉切の玉、胡麻入り煉切の玉、羊羹や淡雪羹製の扇などが錦玉の円柱の中にバランスよく配置されています。
作者不詳の《輪踊り図》をモティーフにした逸品です。
(出典:http://www.yamatane-museum.jp/exh/2014/post-14.html)
美術館の解説によると、この絵の中に描かれている男女は、ともに小袖姿で、カルタ結びと呼ばれる結び方で細い帯をつけています。男性の着物は無地やパターン文様、女性のは肩から裾にかけて大ぶりで華やかな文様や鹿の子絞りなどになっていて、これらは江戸前期特有のデザインだそうです。
このように、元になった絵はかなり細かい部分まで写実的に描き込まれていますが、お菓子では、全体のイメージをざっくりと捉え、抽象的につくられています。
上生菓子は本来、「抽象的」につくられ、銘を聞いて初めて具体化するものが理想とされてきました。
丸や四角などシンプルな形や線を使い、最小限の技巧で抽象的に表現されたお菓子は「粋」のひと言に尽きますね。