「紫陽花(あじさい)」東雲羹製:彩花苑
白漉し餡を芯にして、そのまわりに薄紫色に染め、サイコロ状に切った東雲羹(しののめかん)を敷き詰めるように付けます。仕上げにつや寒天をひと塗りし、鞠(まり)のようにまるく咲く紫陽花を写しています。
最後に塗るつや寒天は、濡れたような質感を表現すると同時に、サイコロが剥がれないように固める接着剤の働きもしています。
このような意匠の紫陽花は、通常、錦玉(きんぎょく)のサイコロを使うことが多いのですが、彩花苑のものは、東雲羹を使っているのが特徴です。
東雲羹とは、冷やした卵白を泡立てて、途中で砂糖を加えながら、角がピンと立つまでよく泡立ててメレンゲを作り、このメレンゲに羊羹を少しずつ加えながら混ぜ合わせ作ったものです。
ふわっとしたメレンゲが入っているためか、東雲羹は錦玉よりも食感が軽く、口どけも良いですね。
この「東雲(しののめ)」という美しい響きの言葉の本来の意味は、「東の空がわずかに明るくなる頃。夜明け方。」です。
これに似た言葉で、「暁(あかつき)」や「曙(あけぼの)」もありますが、ちゃんと区別があって、暁 ⇒ 東雲 ⇒ 曙 の順で徐々に明るくなる様を表現するそうです。
本当に、日本語は自然現象に対する表現が豊かで、繊細で細やかな描き分けが見事ですね。
紫陽花の花色が日増しに変化していく姿は、まるで、夜明けの空がその色を刻々と変化させていく様子に似ていますよね!