「紫の玉(むらさきのたま)」羊羹製(こなし製):とらや
紅色に染めたこなしで白餡を包み、紫陽花の木型で押しぬいた作品です。葉っぱの部分は緑色に染めています。
紫陽花は、雨の中に咲くのが最も似合うとされています。 青や薄紫色の小花を集め、玉のように咲き誇る様子から、この銘がつけられました。
赤い鞠のような紫陽花の可愛らしさが 梅雨の鬱陶しさを忘れさせてくれますね。このお菓子は、「押物 紫之玉」として大正12年(1923)に初めて創作されました。
製法は「羊羹製」となっていますが、私たちが一般に想像する棹型のいわゆる羊羹ではなく、「こなし」という生地で作られています。
「こなし」とは、餡に小麦粉・寒梅粉を混ぜて蒸し、揉み込んだ生地のことで、とらやでは、製法が羊羹の原型である蒸羊羹から変化したことから「羊羹製」と呼ばれています。これはとらや独特の呼称で、他店では「こなし」と呼ばれているものに相当します。
和菓子用語は地域によって、お店によって、また、職人さんによって、同じものでも呼び方がいろいろあり、ほんとうに混乱しやすいですよね。
このお菓子に似た意匠で他の和菓子店のものもあります。
「あじさい」煉切製:龍月
こんな感じで、こちらは淡いピンク色で、葉の位置もちがいますね。
似たような意匠でも、お店によって微妙に違うのが上生菓子の醍醐味でもあります。