今日は、北鎌倉へ紫陽花を見にやってきました。
平日の雨の日にもかかわらず、駅は人でごったがえしています。快晴の週末以上の混雑ぶり。
みなさん紫陽花がお目当てのようで、定番の明月院の方面に向かって傘の列が連なっています。
私は人混みが苦手なので、そちらは避け、穴場の浄智寺に向かって逆方向に進みます。
浄智寺はこじんまりとした禅寺で、境内がそのまま自然の山につながるように建っている野趣あふれる隠れた名刹です。
大好きなある映画のロケ地になったこともあり、よく訪れるお気に入りの場所です。
珍しい中国式の鐘楼門が紫陽花とよく合っていますね。
ここには鎌倉十井のひとつ「甘露ノ井」があり、その井戸水は甘く「不老不死」の水といわれていたそうです。
その名水によって育まれた額紫陽花です。
本来なら、”あいにくの雨”と言うところですが、紫陽花を愛でるには”恵みの雨”まさに紫陽花日和ですね。
しっとりと濡れ咲く紫陽花のなんと美しいこと!
”雨に打たれて散る桜より
雨に打たれて輝きを増す紫陽花が
妙に愛しい”
という尾崎淑久の詩の一節が浮かんできます。
さてさて、ゆったりと紫陽花を鑑賞した後は、さらなるお楽しみが待っています。
今回の真の目的といってもいいくらいですが、お気に入りの御菓子司「こまき」さんであじさいのお菓子を買って帰るのです。
ここの上生菓子は、原則1日1種類のみしか作らず、お持ち帰りは6個以上からという条件がついています。
でも、注文を受けてからその場で作ってくれる、まさに「作りたて」の和菓子を食べられる貴重なお店なのです。
お菓子が出来上がるまでの間、せっかくなので店内であんみつを食べながら待つことにしました。
フルーツは缶詰ですが、自家製つぶ餡や寒天は、さすが老舗和菓子屋さんだけあって、素材の良さが際立つ見事なお味でしたね。
こまきさんは、販売主体の和菓子屋さんというより甘味処の造りで、4人掛けテーブルが4卓だけのこじんまりとした落ち着いた雰囲気の茶店です。
メニューは看板の上生菓子とお抹茶のセット以外に、小倉白玉やところてんなどもあります。
紫陽花シーズンで、この人出ですから、てっきり店内は満席かと思っていましたが、意外にもお客さんは一人もいません。
駅の改札口から20歩ほどで来れる近さで、外は人であふれているというのに、ここは別世界。
店内の突き当りがはめ込み式の一枚ガラスになっていて、雨に濡れそぼる円覚寺の白鷺池が絵画のように見渡せます。
あんみつも食べ終わり、ひと息ついたところでようやくお目当てのお菓子が出来上がってきました。
菓子折りのキリリとした姿からも、中のお菓子の特別感が伝わってくるようです。
20分ほど電車に揺られた後、家に着くなり待ちきれずにすぐに開封しました。
木を紙のように薄く削った経木(きょうぎ)で包まれているのがこれまたいいのです。
自然の木の香りが和菓子をやさしく包み込み、家に持ち帰って食べたとき、プラスチックケース入りのものと比べ、明らかに風味が異なります。
ジャジャジャ〜ン!
憧れの錦玉の紫陽花がこれだけ並ぶと壮観ですね!
間に桜葉が添えられ、自然の緑が加わると、お菓子の輝きがいっそう増します。
さっそく盛り付けてみました。
まずは溶岩石風の平皿に配置してみました。ふだん多くても二個までした買ったことのなかったこの種のお菓子、これだけ並ぶと贅沢感が半端ないですね。
ふたつとして同じ形のものがないのも、手作りならではの味わいです。
桜葉があるのでそれをうまく生かして紫陽花らしく盛り付けてみました。
錦玉の淡い紫の煌めきは、まさに浄智寺で見た紫陽花そのもの。まるであの花を見て創ったかのよう。
銘々皿に取り分けてみました。
「あじさい」錦玉製:こまき
白こし餡を芯にして、そのまわりをさいの目に切った紫色の錦玉で敷き詰めるように包み囲んだお菓子です。
さいの目がいろいろな向きに付いているので、見る角度によって表情が刻々と変化するのがおもしろいですね。
また、錦玉のプリズム効果によって、光の屈折率が複雑に変化し、まるで万華鏡を見ているかのように、色合いが変化するのもこのお菓子ならでは。
中の白餡がこれまた絶品!
まだ職人さんの手の温もりが残っているかのような優しい口当たりに、なめらかな口どけ。
少し歯ごたえのある硬めの錦玉は、噛むたびに、ほどよく餡とからまり、口の中で心地よいリズムを刻みます。
これぞ至福のひと時、和菓子の世界ってほんとうにいいですよね!