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水ぼたん(こまき)

 

「こまき」さんのお菓子が無性に恋しくなり、北鎌倉に行くことにしました。

 

ここの上生菓子は一日に一種類のみで、注文を受けてから作ってくれるというこだわり!

 

今日はどんなお菓子が迎えてくれるのか、電車に揺られながらいろいろな空想を膨らませます。

 

連日の猛暑なので、錦玉や葛など、さっぱりした素材のお菓子がいいかな。 

 

でもそれだと、作り立てが味わえないし、やっぱり、しっとりふんわりしなやかな、できたてのホヤホヤの煉切も捨てがたい。 

 

外郎や求肥などお餅系のお菓子はまだ食べたことがないので、こまき流を一度味わってみたいし。。。 

薯蕷饅頭も。。。 

 

あれやこれやと思いを巡らせている間に、北鎌倉駅に到着。 

 

紫陽花のシーズンも終わり、本格的な夏に入ると北鎌倉は一気に静まりかえります。 

 

この時期の観光客は、鎌倉の由比ガ浜や逗子海岸など、海の方へと目が向くので、山あいにある北鎌倉は置いてけぼり。

 

でも、人混みの苦手な私にとってはまさにうってつけの季節なのです。 

 

まずは円覚寺に向かいます。 

 

 

座禅堂の茅葺屋根が、痛いほどの日差しを受け、版画のように鮮明な輪郭を描いています。 

 

境内は森閑として、蝉の声だけが潮騒のように響き、裏の林から抜けてくるそよ風のなんと心地よいこと。 

 

小一時間ほど散策した後、いよいよこまきさんに向かうことにしました。 

 

ここの暖簾をくぐるときのわくわく感は、何度来ても薄れることがありません。

 

いつもは、奥さんらしき中年の女性、あるいはお母様らしい高齢のご婦人が接客してくれるのですが、今日は珍しくご主人自らが応対してくれました。 

 

「今日のお菓子は葛のお菓子です」 

 

葛と聞いて、全身の汗がすぅ〜とひいていくようです。 

 

持ち帰りは6個からなので、最少単位で注文しました。 

 

 

つやっつやの光沢感、見るからに弾力のありそうなぷりぷり感、涼やかな透明感など、美味しさ全開ですね。

 

底に敷かれた桜の青葉とのコントラストも美しい。 

 

「水ぼたん(みずぼたん)」葛製:こまき 

薄紅色に染めたこし餡を上質の吉野葛で包み、茶巾絞りに仕立て、絞り口を上にします。豊艶な牡丹のつぼみのみずみずしさを表したお菓子です。 

 

半透明な葛の生地ごしに中の紅餡がほのかに透け、なんとも清々しい牡丹の姿に仕上がっていますね。

 

とてもシンプルなお菓子ですが、主役は餡ではなく葛!それ故に葛本来の風味や美しさが問われる逸品ですね。 

 

 

夏になると、水まんじゅう、水大福、水ういろう、水楓、水蛍など、頭に「水」がついた、いかにも涼しげな名前の和菓子が続々と登場します。 

 

そのほとんどは葛や錦玉などの透明感のある素材を使って作られたお菓子です。

 

水シリーズでこの時期人気なのが、「水牡丹(みずぼたん)」です。本来、牡丹は4〜5月の花ですが、その見事な美しさを涼やかに夏向きに表現したものがこのお菓子です。 

 

見た目に涼しいだけでなく、葛には、発汗・解熱の作用があるので、まさに夏に食べるのにぴったりのお菓子ですね。