「蝶(ちょう)外郎製:豊島屋
黄色に染めた外郎の薄皮を折りたたみ、白こし餡を包み、さらに焼き鏝(こて)で羽紋を描いたお菓子です。
陽春の頃、色鮮やかな草花が光る野を、一頭の蝶が舞い飛ぶのどかな風景が目に浮かびます。
蝶は春を代表する昆虫です。陽気に誘われて、鮮やかな翅(はね)を羽ばたかせながら、蜜を求め、花から花へ飛びめぐります。
その美しくもはかなげな姿から、しばしば上生菓子の主題として取り入れられています。
古代中国の思想家、荘子の作品の中に、「胡蝶の夢」という話があります。
うたた寝をしていて、蝶となって飛びめぐる夢を見た後、目覚めた時に、自分が夢の中で蝶になったのか、蝶が夢の中で自分になったのかと自問するという内容です。
この逸話に基づいて、茶の湯の世界では蝶の意匠を「荘子(そうし)」と呼ぶそうです。