「吉野川(よしのがわ)」求肥製:一炉庵
刻み栗入りの白小豆こし餡を包んだ求肥餅の中央をくぼませ、そこに桜花の塩漬けを入れ、錦玉を流し固めたお菓子です。
吉野川や吉野山の桜は古来より、竜田川の紅葉とともに、『万葉集』をはじめ、『古今和歌集』や『新古今和歌集』などで詠み継がれてきた有名な題材です。
吉野川は奈良県吉野郡の山中に源を発し、吉野山のふもとを流れ、さらに、和歌山県に入って「紀の川」とその名を変える川です。
吉野川は『万葉集』では清浄な川という詠まれ方が主でしたが、『古今集』の時代になると、その激流に心情の激しさを喩えた歌が多くなりました。
さらに、平安時代の中期になると、吉野山の景物の桜が吉野川に流れてきたという形で詠まれるようにもなりました。
みなかみに桜ちるらし吉野河いはこす浪の花と見えつつ(郁芳門院安藝)
【通釈】川上で桜の花が散っているらしい。吉野川の、岩を越えてゆく白波がさながら花と見えて…。
奈良吉野川
(参考文献:http://www.rfc.or.jp/rp/files/13-23.pdf「文学に見る人と川のかかわりに関する調査研究」)
(和歌出典:http://www.asahi-net.or.jp/~sg2h-ymst/yamatouta/sennin/aki_i.html)
(写真出典:http://www1.kcn.ne.jp/~uehiro08/contents/sanpo_yosino.htm)