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虞美人草

「虞美人草(ぐびじんそう)」煉切製:一炉庵 
ピンク色に染めた煉切で小豆こし餡を包み、茶巾絞りにてひなげしの花をかたどります。さらに、ヘラを使って辺縁をぎざぎざにし、しべを添えたお菓子です。 


歌会始の御題をもとに作られた創作和菓子のことを御題菓(おだいか/ぎょだいか)といいます。 

翌年の御題が発表されると、各和菓子店では一年がかりで御題菓の準備をはじめます。どのような意匠にして、素材や味は何にするか、御題にちなんだイメージをふくらませ、何度も試作を重ねて創り上げていきます。 


平成28年の御題は「人」です。「人」は「ジン」「ニン」「 ひと」「と」など、いろいろな読み方がありますが、御題菓の条件は、「人」の文字が菓銘に含まれるか、「人」の意味がお菓子に込められていればOKです。 


一炉庵さんといえば、この店の裏手に住んでいた夏目漱石が足しげく通ったお店として有名です。また、一炉庵さんの飼い猫が漱石宅に遊びに行き、例の『吾輩は猫である』が生まれたともいわれています。 

このように、一炉庵さんにとって関わりの深い夏目漱石の執筆した小説『虞美人草』にちなんだお菓子です。 

虞美人草とは、ひなげしの別名で、虞美人(中国歴史上の絶世の美女)が自決したときの血が、この花になったという伝説があります。 

今年は夏目漱石没後100年の記念の年でもありますからまさにうってつけの逸品ですね。 


職人さんの素晴らしい創造力と美意識、巧みな技が結集した御題菓をじっくり味わってください。