「春の野(はるのの)」煉切製:ちもと
黄身餡に少量の薄緑餡を加え、小豆こし餡を包み茶巾絞り仕立てにしたお菓子です。
「春の野に すみれ摘みにと 来し我れぞ
野をなつかしみ 一夜寝にける」
山部赤人『万葉集』
(すみれ摘みにやってきたけれどなんと春の景色の美しいこと
つい見とれているうちにとうとう一夜をあかしてしまいましたよ)
このように、万葉の昔から人々は春が来るのを待ちかねて野に繰り出し、遊んだようですね。
このお菓子はすみれではありませんが、一面に黄色い花が広がる春真っ盛りの野原を写しているようです。
稜線に添って帯状に色どりを添える緑色は、花畑の中の木立でしょうか?それとも遠景の山並みでしょうか?
春、雪が消え、草木が芽吹き、色とりどりの野花が咲き乱れ、日に日に緑やカラフルな色に染まってゆく野を「春の野」といい、春の季語になっています。
野遊びも摘み草も、自然の生命力にあやかろうとする人間の信仰から生まれた行為ですが、その習慣は現代人にも受け継がれていますね。