「文の助茶屋」さんの睦月の上生菓子

「赤富士(あかふじ)」羊羹製:文の助茶屋

 

「赤富士」とは、「初日の出によって赤く染まる日本一の霊峰」という意味で、日本最高峰の富士と初日の出というダブルでめでたさが重なる縁起物です。 

 

「福梅(ふくうめ)」求肥製:文の助茶屋

 

まるで、琳派の描くシンプルで垢抜けた文様のような意匠。雄蕊(おしべ)の先に付いている花粉をケシ粒を散らして表現しています。

 

「福は内(ふくはうち)」薯蕷製:文の助茶屋

 

はじめて見たときは鶴の意匠かと思いましたが、よく見ると、福笑いの「おかめ」「おたふく」に見えます。ふっくらとした頬の、愛嬌のある顔を見ていると、自然と笑みが浮かんでくきますね。節分には、厄除けと招福の願いをこめて、おかめさんの饅頭を食べましょう。 

 

「勅題 静 舞子(ちょくだいしずかまいこ)」煉切製:文の助茶屋

 

宮中歌会始の2014年の御題「静」にちなんだお菓子。「静」といえば、源義経の愛妾であった白拍子の静御前を思い浮かべますが、それつながりで扇の意匠となったのでしょうか? 


以上、京都の老舗和菓子屋「文の助茶屋(ぶんのすけぢゃや)」さんの一月の上生菓子を4種類紹介しました。 


「文の助茶屋」さんは、明治43年に、当時上方の落語家だった「二代目桂文之助」が甘酒茶屋として創業したのが始まりです。 

そのためここの看板商品といえば、まず『甘酒』。 

創業以来受け継がれてきた手作りの伝統技法で作られる逸品です。麹から作る甘酒は、一切砂糖は加えないですが、発酵による自然の甘みがたっぷり。糖化発酵を経たところで止めるために、アルコール分も無く、赤ちゃんの離乳食にもつかわれるほど。 


ここの創業者から伝わる心得が素晴らしく、大いに共感できるので、紹介します。 

まず、『粋様参る無粋な店(すいさままいるむすいなみせ)』。 

これは、「粋なお客様は、無粋な店(店員)を育てて下さる、互いの心が通いあう時、互いに発展、道が開け、素晴らしい世界がつくりだされる。」という意味だそうで、いかにも落語家らしい粋な心得ですね。 


ふたつめが、『京に田舎有り』。 

この意味は、「京都の町は時代とともに変わりゆくが、古き良き京都、精神的な部分を残さねばとの思いから、時代が変わろうとも変えないところ、1軒でもいいからいつ来ても変わらぬ店を残すことは、必ず私達町衆にとり将来よりどころとなる。」ということだそうです。 


京都本店は東山の好立地にあり、八坂神社から清水寺の界隈を散策する旅人や参拝者の疲れを癒すお休み処として、昔から変わらず今も賑わっています。