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「美鈴」さん

 

大好きな鎌倉 !毎月のように通い詰めています。 

 

鎌倉に行く楽しみが3つあります 。 

 

一つは「ローストビーフの店鎌倉山」本店でローストビーフを食べること 。 

もう一つは喫茶「イワタ」で名物の極厚ホットケーキを食べること 。 

そして最後に「美鈴」の上生菓子を買って帰ること 。 

 

 

1972年創業の知る人ぞ知る和菓子処 「美鈴(みすず)」さん 。 

 

わざわざ上生御菓子所と看板を掲げているだけあって 、上生菓子には並々ならぬ情熱を注いで作っています 。

 

茶人御用達のお店で 、鶴岡八幡宮をはじめ鎌倉の神社やお寺のお茶会用の和菓子を専門的に作っています。 

 

 

もちろん一般向けに販売もしてくれますが 、予約販売が原則 。飛び込みで行った場合 、たまたま在庫が残っていれば買えますが 、確実に購入したい場合は前日までに電話で申し込むのがベストです。

 

ここは固定の商品は一切なく 、すべてのお菓子は季節ごと月ごとに変わるのが特徴です。 

 

 

お店は鎌倉の閑静な住宅街の中にあって 、店舗という感じではなく 、民家の玄関先で予約商品の受け渡しだけ行う方式。 

 

だから陳列ケースも商品棚もありません。

 

白壁沿いの小路の先に暖簾がかかっています。

 

 

今日は、晩秋の鎌倉の風物を描いた素敵な上生菓子を六趣お届けします。

 

 

 

「雁がね(かりがね)」求肥製 

 

求肥で餡を包み丸めた上に羊羹生地をのせ、焼き印で飛んでいく雁の様子を描いています。 

 

小豆色の滲んだような輪郭が、夕暮れ時の秋の空をイメージさせる渋い味わいの作品です。

 

 

 

「深山きんとん(みやまきんとん)」きんとん製 

 

小豆こし餡をしんにして、黄色と朱色に染めた餡を裏ごししたそぼろを、ていねいに植え付けて仕上げています。 

 

紅葉が深まった風情を鮮やかな色彩で表現していますね。

 

 

 

「玉菊(たまぎく)」求肥製 

 

白い求肥餅をふんわりと丸め、中央をへこませ、黄色く染めた煉切の花芯を入れ、さらに緑色の煉切で作った葉を添えています。

 

この菓銘の「玉菊」という名前、菊の種類のひとつかと思いましたが、いろいろ調べても情報がありません。江戸時代の有名な遊女の名前のようで、ほとんどがこちらの情報ばかり。

 

「玉のように愛らしい菊」と解釈することにしました。

 

 

 

「いちょう」煉切製 

 

鮮やかな黄色に染めた煉切で舞い散るいちょうの葉を表現しています。 

 

このいちょうの造形をはじめて見た時は本当にびっくりしました。三次元的に複雑な構造になっていて、見る角度によって表情が様々に変化するのです。

 

この1枚の写真だけではわかりにくいですが、角度を変えて見ると、落下する葉っぱがねじれたり、裏返ったり、折り曲がったりいろいろな動きをする様子がコマ送りのように、見てとれるのです!

 

 

 

「山茶花(さざんか)」煉切製 

 

花弁の部分はうす紅色と白色のぼかし、花芯の部分は黄色に染めた煉切を布で絞っておおらかなひだをつけ、煉切製の葉を添えています。

 

小春日を受けて咲き、散っていく山茶花は、椿とは趣を変えて、いかにも可憐でやさしい花ですね。 

 

 

 

「八千代岩(やちよいわ)」外郎製 

 

外郎餅を螺旋(らせん)状に折り込み、こし餡を包み、抹茶をふりかけ、苔むした巌(いわお)を表現したお菓子です。

 

外郎を三方、四方から折りたたんだり、花弁形に折り寄せて餡を包むパターンが多いですが、美鈴さんの渦巻くような折り方は独特ですね。