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「つ久し」さん

 

 

「つ久し(つくし)」さんは昭和24年創業の目黒区八雲にある御菓子司です。

 

現在の店主は3代目の杉浦秀和さん。 店名の由来は苗字の「杉」を一文字とって、その子供という意味で「つくし」になったそうです。

  

ここの和菓子は毎朝作り、その日のうちに売り切るのでとても新鮮。 

 

上生菓子は今、ほとんどの店が事前にひとつずつプラスチックケースに収めて保管する方式をとっていますが、つ久しさんは注文の度にひとつひとつ番重(ばんじゅう:薄型の運搬容器)から取り出して、経木(きょうぎ)を敷いた箱に入れてくれます。

 

経木とはスギやヒノキなどの木を紙のように薄く削ったもので、食品を包装する材料やトレイなどに用いられます。

 

上生菓子専門店の「ささま」さんや「こまき」さんも経木を使っていますが、木の自然の香りが和菓子をやさしく包み込み、家に持ち帰って食べたとき、プラスチックケース入りのものと比べ、明らかに風味が異なります。

 

昔は経木で包むのが一般的でした。この経木は通気性や殺菌性に優れていて、使用後は焼却や堆肥化利用もでき環境にも優しいので、また再度普及してもらいたいものです。 

 

つ久しさんの今日の上生菓子は、美しい紫色に惹かれ、この一品に決めました。

 

「紫式部(むらさきしきぶ)」雪平製:つ久し 

餡を雪平(せっぺい)で包み、紫式部の実と葉をかたどった羊羹を飾り付けています。雪平の白さが実の紫色をいっそう引き立てていますね。

 

源氏物語の作者として有名な紫式部と同じ名前の植物を写したお菓子です。

 

紫式部は秋に光沢のある紫色の小さな果実をつけます。たくさん枝分かれする細い枝に、紫色のつぶらな実が密についている様は、花のように美しい。

 

紫式部は花よりも色鮮やかな実の方が鑑賞の対象となっているので、季語としては「紫式部」だけで「紫式部の実」 の事を指し、晩秋の季語になっています。