今日は、赤坂の名店「塩野」さんの上生菓子を紹介します。
ここの評判は前から聞いていて、是非一度行きたいと機会をねらっていたが、先月11月に初めて訪問することができたので、その時の様子をお知らせします。
赤坂は皇居、迎賓館に国会議事堂、そしてテレビ局と、東京の中枢機関が集まる街。またかつては料亭が建ち並び、花街としても知られたところ。昭和の頃は赤坂から青山にかけて、和菓子屋が約20軒も軒を連ねていたといいます。
そのような過当競争の中、「塩野」は昭和22年創業以来60年以上、変わらずにお菓子を作り続け、根強い人気を得ているお店なのです。
店内の大きなガラスのショーケースにずらりと並べられた、色とりどりの上生菓子を見ると、思わずウキウキ心が躍ってしまいますね。
ここの上生菓子は毎月12種類も用意されていて、そのうち8種類は1か月通しでの販売。残りの4種類は月の前半(1日〜14日まで)と後半(15日から月末まで)でデザインが変わります。
今回購入したのは、以下の7種類、霜月後半の上生菓子 となります。
「武蔵野(むさしの)」浮島:栗蒸羊羹製:塩野
武蔵野は歌枕(うたまくら)のひとつで、万葉集以後、たくさんの歌に詠まれています。今の東京都と埼玉県にまたがる関東平野西部の、多摩川流域から荒川流域に及ぶ原野をさします。かつて武蔵野は広大なすすき野原だったそうです。
このお菓子は、色づいたススキの穂が、まるで黄金色の絨毯を敷き詰めたように日の光を受けてキラキラと輝く様子を現しているようにみえます。
「霜夜(しもよ)」栗きんとん村雨製:塩野
晴れた風のない寒気のきびしい夜に、霜は降りてきます。家にいても、しんしんと寒さがつのり、風のある晩は葉のすれる音がする裏の林も今夜は何の音もしない。夜空には星が澄んで見え、一段と輝きをましています。こんな霜の降る夜の静寂をイメージしたお菓子です。
「山茶花(さざんか)」煉切製:塩野
花が少ない冬の季節に華やかに凛と咲く山茶花を見ると元気が出ますね。そんな気高い花を写実的に写したお菓子です。
「いちょう」黄味時雨:塩野
塩野さんの黄味餡は定評があります。この店の自信作のようで、黄味餡を使った上生菓子が多いです。特徴は、その鮮やかな色と、コクのある風味。一度食べたら病みつきになりますね。目に映えるここの黄味餡の色は銀杏を表現するのにまさにぴったりの色。
「銀杏(いちょう)」外郎製:塩野
銀杏が黄金色に色づく季節。緑の木々の中で、そこだけまるでスポットライトが当たっているかのように光り輝く大銀杏の姿は壮麗ですね。風が吹くたびに無数の扇葉がはらはらと舞い落ちる様は言葉に表現できないほど見事。こんなイメージのお菓子です。
「里の菊(さとのきく)」煉切製:塩野
里の菊とは、里の野原に咲いている野菊なのか、里で栽培されている菊なのか?黄色、白、小豆色の三色が何を写しているのか?単純に黄菊、白菊に紫菊と解釈するか?黄菊、白菊はいいにしても、小豆色は何か別のものなのか?里といえば、田畑を思い浮かべるので、土の色なのか?とか、いろいろ空想するのが楽しいお菓子です。
「立田山(たつたやま)」薯蕷饅頭:塩野
立田山は奈良県生駒郡三郷町の西方の山を漠然と呼ぶ語で、紅葉の名所として古来より多くの歌に詠まれてきました。有名な歌枕のひとつでもあります。
織部饅頭をほのかに紅色に染め、紅葉に見立て、織部釉(おりべゆう)の緑色を常緑樹に見立て、その対比を楽しむお菓子です。