寂れた片田舎の小さな和菓子屋さんなのですが、何か心惹かれるものがあって、ついつい足を運んでしまうお店があります。
東逗子にある「三吉野(みよしの)」さん。
店内は、お店というより、お菓子工房の脇にとりあえず売るスペースを設けたような、飾り気のない殺風景な売り場であす。
陳列している商品の数も極端に少なく、本当に細々とやっている感じのお店なのです。
駅から1〜2分の立地ですが、駅前といってもほとんどのお店が廃業してしまったさびれた商店街で、人通りも少なく、店内で他のお客さんに出会ったことはありません。
活気がなく閑散としていて、余計なおせっかいですが、商売は成り立っているのだろうかと心配になるような様子です。
そんな中で、三吉野さんは、毎月季節の上生菓子を丁寧に作っています。
上生菓子は日持ちしないし、売れる数も限定的で、効率を優先させる店では、上生からは手を引き、管理が容易で売りやすい焼き菓子などを中心に販売している和菓子店も多い。
それでも、かたくなに上生菓子に情熱を注いでいるところがここの魅力なのです。
デザインも他店にないオリジナリティーを感じさせるひと工夫があり、職人魂というか、その気概に敬意を表して、時々お店をのぞかせてもらっています。
今月の上生菓子は3種類。
「栗かのこ(くりかのこ)」 鹿の子製
大きめの栗を使った栗かのこ。通常栗かの子は最低でも3個以上栗をくっつけたものが多いですが、三吉野製はシンプルに2個のみ。この左右対称の造形が、くす玉が割れたような、あるいはてんとう虫が羽を広げたような、あるいはトンボの目のような、色々なものに連想されて楽しいですね。
「やきいも」 さつま芋餡製
さつま芋を蒸かし、裏ごししてから白餡とあわせたさつま芋の餡をまるめ、寒天でコーティングしたおもしろいお菓子です。光沢があって、中国の玉(ぎょく)のように綺麗。
ご主人曰く、「栗は味や食感を、さつま芋は風味と口どけを楽しんでください」とのこと。
「紅葉(こうよう)」煉切製
店主が河口湖畔のもみじ回廊を見に行った時の印象をこのお菓子に込めたそうです。鮮やかで勢いを感じさせる楓の葉の造形が素晴らしい。