「花菖蒲(はなしょうぶ)」蒸切葛製:両口屋是清
小豆こし餡を芯にして、そのまわりを紫色に染めた白小豆こし餡で包み、さらにその上に黄色く染めた餡をのせ、最後に餡全体を吉野葛で包んださっぱりとしたお菓子です。
半透明な葛の生地越しに、中の紫と黄色の餡がほのかに透けて見えるのが心憎い仕掛けです。
紫陽花(あじさい)とともに、花菖蒲も雨が似合う花ではないでしょうか?
雨だからこそ美しく咲く花もあります。しっとりと雨に濡れる趣に心を動かされるのは日本人ならではの美意識によるものでしょうね。
鮮やかな紫色の花菖蒲は、快晴の太陽の下よりも、雨雲のかかったやわらかい日差しの下のほうがかえって映えるような気がします。
また、細かく入り組んだ複雑な花びらが、雨に濡れると、水滴を透過した光がいろいろな方向に乱反射して、まるで紗が掛かったように、輪郭がぼやけて、独特の風情を醸し出しますね。
このお菓子からは、そんな花菖蒲の姿が目に浮かびます。