「汀のほとり(みぎわのほとり)」錦玉製:菊家 (2016年)
緑色に染めた煉切をそぼろ状にした上に、紫の錦玉製や白い淡雪羹製のかきつばたの花を立体的に配し、錦玉で固めたお菓子です。
菊家さんは、一昨年も同じ菓銘のお菓子を出していますが、今年のものとは少し趣が異なっています。
「汀のほとり(みぎわのほとり)」錦玉製:菊家 (2014年)
いずれのお菓子も、水辺で静かに咲くかきつばたの花々が水面に映った様子を表しているように見えます。
かきつばたは、池や湖などの水辺や湿地帯に自生するアヤメ科の植物で、あやめや花菖蒲(はなしょうぶ)とともに初夏の風景にはかかせない、日本情緒あふれる花ですね。
漢字表記としては「杜若」が一般的ですが、本来はヤブミョウガという別種の漢名「とじゃく」を誤用したものとされています。
また、花が燕(つばめ)の飛び立つ姿にも似ていることから、「燕子花」とも書くようです。
昔から「いずれあやめか かきつばた」と言われ、美人の形容詞にされたり、"どれも優れていて選択に迷う"という意味で用いられたりしますが、同じアヤメ科アヤメ属の中でも、かきつばたは、最もゆかしい優雅な風情を持った花ではないでしょうか。