「薫風(くんぷう)」煉切製:菊家
空色に染めた煉切で餡を包み、平らな円柱状に形作ります。若葉色に染めた煉切に木型で楓の葉の模様をつけ、土台の上に配し、銀箔を添えています。
爽やかに晴れ渡る初夏の空から、楓の若葉ごしに優しい陽射しが降り注いでいる風景が目に浮かびます。
時折吹いてくる薫風に若葉がそよぎ、そのたびに日差しがきらめいています。私の大好きな「木洩れ日(こもれび)」の光景です。
木洩れ日とは、樹木の枝葉の間からさし込む太陽の光のことで、「木漏れ日」とも書きます。
日本人なら誰でも知っているこの木洩れ日ですが、実は英語にはこれに相当する単語がないそうです。
四季があり、自然を愛し、その移ろいを敏感に感じ取りながら生活している繊細な日本人ならではの言葉のようですね。
古来より短歌や俳句に親しみ、限られた文字数の中で花鳥風月を詠んできただけあって、様々な自然現象を切り分け、短い言葉に集約し、磨き上げて表現する文化が育ってきたのでしょう。