「花扇(はなおうぎ)」煉切製:秀山庵
扇は、あおいで風を起こすだけでなく、儀式や祭事、舞踏の道具としても使われます。また、末広がりの形は、発展や繁栄の吉祥でもあることから、縁起の良いものとして、新年や婚姻などの祝賀の贈り物にも使われます。
さらに、扇には四季の草花や古典文学の一場面が描かれているものも多く、感性が和菓子の世界と共通しているため、上生菓子の意匠としてもよく用いられます。
和菓子の扇で特に有名なものは、「七夕花扇」です。これは、7種類の初秋の草花(ススキ・女郎花・桔梗・撫子・菊・萩・蓮)を束ねて扇の形に作り、檀紙(だんし)で包み、水引をかけた花束に由来するものです。かつて旧暦の7月7日に陽明家(近衛家)から宮中に献上されていた花束です。
今回のお菓子はこの「七夕花扇」ではなく、扇に季節の花である梅を描いた作品です。精巧な図柄の木型で押し抜いています。