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草餅の原形

「若草もち(わかくさもち)」餅製:とらや 
白い餅製の生地に蓬(よもぎ)の緑を配した意匠は、早春の雪の間に萌え出ずる瑞々(みずみず)しい若草を思わせます。 

このお菓子の初出年は平成12年(2000)ですから、歴史あるお菓子の多いとらやの上生の中では比較的あたらしい意匠のものです。 

まるで惑星のようにきれいな模様ですね! 



三月三日の雛の節句は、
草餅の節句ともいわれます。女の子の誕生祝いに母子の健全を祈るため、邪気を払い、疫病を除く薬草を搗(つ)き混ぜた餅を贈ったのが草餅のはじまりです。 


昔は蓬ではなく、「鼠麹草(ほうこうぐさ)」といわれる生薬の一種を使って作っていました。この薬草は別名「母子草(ははこぐさ)」ともいい、これは春の七草のひとつ、「御形(ごぎょう)」のことでもあります。 

しかし、「母と子を臼と杵でつくのは縁起が良くない」として、平安時代ごろから蓬に代わったとされています。 


現在では乾燥貯蔵した蓬があり、年間を通して利用されますが、早春に萌え出たばかりの蓬を摘んで作った香り高い
草餅こそ、季節の風味であり、雛祭りの供え物にふさわしいと思います。