「うぐいす」外郎製:豊島屋
うぐいす餡を外郎生地で包み、両端を少し尖らせるように紡錘形に丸め、煉切製の目玉をちょんと付けて、極めてシンプルに鶯(うぐいす)を表現。
うぐいす餡とは、青豌豆(あおえんどう)を茹でたものを潰して、砂糖または蜜で甘い味をつけた緑色の漉し餡のことです。
(餡の製造会社である鈴木食品株式会社のHPからお借りしました)
日本の文化芸術の特徴は「省略」にあると言われています。
作品にはその入り口だけが示され、後は受け手が世界を広げて味わう。
「省略の美」こそ最高の美であるといいます。
和歌や俳句の世界も限られた文字数で、一切の過飾をそぎ落としシンプルに表現しますよね。
また、すぐれた浮世絵師はわざと「一色抜く」ことをしたそうです。最後にこの色を加えれば作品が完璧になるというときに、あえてその一色を加えない。すると、作品がかえって引き立つといいます。
今回紹介したお菓子も究極の省略がなされていますね。
あと、写真ではわかりにくいのですが、半透明の外郎生地を通して、中のうぐいす餡の深緑色がほのかに浮き上がり、独特の色合いに仕上がっています。
上原晴男氏は『「抜く」技術』という著書のなかで、これら「省略の美」について、おもしろい分析をしています。
これは、間や空間、静けさや淡いものに美しさや洗練を感じる日本人の美意識のなせる業で、私たちはもともと押すよりも引く、加えるよりも抜くことを美しいと感じる美学をもっているためであると。
この日本人独特の美的感覚には大いに共感できます。