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謎解きの上生菓子(3)

「干支菓 午(かんしか うま)」薯蕷製:鶴屋八幡 

黄色に染めた薯蕷生地でこし餡を包み楕円形に丸め、蒸し上げた後、焼印を押したお菓子です。 


このお菓子、菓銘によると、今年の干支つまり、午(馬)にちなんだものです。 

午(うま)にちなんだ上生菓子は今までに17種類集めました。 


その意匠としては、「午」や「馬」の漢字をそのままデザインしたもの、絵で馬の姿を表現したもの、馬の形を彫像のように立体的に写したものなどがほとんどです。 

ところが、この鶴屋八幡の干支菓子は、そのどれにもあてはまらない。漢字の「甲」にそっくりな図柄の焼印が押してありますが、この焼印が午(馬)とどう関係するのかわかりません。 


「甲」は象形文字ですが、その原型は「亀の甲羅の腹側」だということで、午(馬)とは関係なさそうですね。 


2014年の干支は、正式には「甲午」(きのえうま)なので、甲午の甲に由来するものなのでしょうか? 


もう一度、この焼印をよく見ると、「甲」の下に突き出た縦棒の下端に小さな輪が付いています。 

何かの道具のようにも見えます。ぱっと思いついたのが、蝿たたき(笑)。でも、上生の素材としてありえません。 

この輪の中に綱や紐を通して使う道具のようにもみえますが、何の道具なのかは見当がつきません。 


このお菓子を買って2週間くらい経ち、すっかり煮詰まってしまっていた頃、桐をモチーフにした家紋をいろいろ調べていて、偶然にこの焼印の形にそっくりな家紋を見つけたのです! 

 

(家紋オンラインからお借りしました。) 

「中陰五三桐に轡」という難解な名前の家紋で、桐の花と葉っぱに轡(くつわ)が合体した家紋です。 

この轡というのは、馬の口に含ませ、手綱をつけるための金具のこと。 


これで、やっと馬とつながりました!! 


轡の端に手綱を引く環状の金具があり、実際のものはこんな形をしているそうです。 

 

(この写真はAntiques 神山のブログからお借りしました。) 


ああ、これで、すっきりした!